=== memo ===

こつこつ読書感想文📝

『仕事。』川村元気(集英社)

仕事は、金のためだけにあるのではない。

だからこそ、どんなに金持ちになってもスティーブ・ジョブズは働き続けた。

それはきっと彼にとっての仕事が、人生を楽しくする手段だったからだ。

 

「仕事。」で世界を面白くしてきた日本の巨匠の方々は、30代のころ何を考えていたのか?そんなテーマで行われた対談をまとめたもの。

 

仕事。 (集英社単行本)

仕事。 (集英社単行本)

 

君らの世代に共通した何かっていうのは僕は見当もつかないけど、僕らの世代は他人の映画の悪口ばかり言っていた。でも、後になって批判する頭のよさより、いいなぁと惚れ込む感性のほうが大事だと思うようになったね。アイツはばかだとか、あの作品はだめだとか、決めつけるのはかっこよかったり気持ちがよかったりするけど、そういう人間はえてして才能がない場合が多いな。

ーー山田洋次さん

でもね、例えば今の若いフリーランスのライターがある時期ぐっと我慢して、大きな仕事を一つするってことをどうしてできないんだろうって思ったりもするんですよ。3年歯を食いしばって名刺代わりになるような仕事を完成させれば、そこから自由が拓けるのに、それを耐える忍耐力が若い書き手には少ないんだろうかって。

ーー沢木耕太郎さん

 20代後半で人生を通して表現するコンセプトを発想して、そのことを今でもずっとやり続けている感じがする。だいたい、30代前半までにやることが見つからなかったら、人生やることないよ。自分の原体験みたいなものは、そこまでに出尽くしちゃってるもの。

ーー杉本博司さん

20代や30代なんて言ってみれば青春時代なわけで、僕だって自分なりの表現やオリジナリティにたどり着けていないにもかかわらず、破天荒に無鉄砲にやってました。ただ、本当に作品と言えるものはもっと先になるんじゃないかなとは常に思ってましたけどね。

ーー倉本聰さん

よく若者たちに言うのは「受け仕事だけになるな」ということ。過去の遺産で、目をつむっててもできるようになると、仕事なんて面白くないんだよ。連鎖を断たないと。僕にしてもAKBが当たればアイドルの話、『川の流れのように』が当たれば演歌の話ばかりがくる。つまり、秋元康にこんなことをやらせたら面白い、なんてことを考えてくれる人は誰もいない。

ーー秋元康さん

追い込まれますね。でも、堀越二郎堀辰雄は、もっと追い込んでいたでしょう。『風立ちぬ』の中でも出てくる台詞ですが、「力を尽くしてこれをなせ」というのは、どんなジャンルの仕事でも当てはまると思います。

ーー宮崎駿さん

だから、高いところとか低いところではなく、混ざったものの中で面白いことを探すっていうのが始まっていると思うんですよ。"anyone"、つまり隣人を尊敬できないと、やっぱり本当は思想として弱い。いや、自分だってなかなかできないし、今だって「あの野郎・・・」とか毎日思っているけど、僕は未来の側にちょっと贔屓したいんで、そっちにアクセルを踏みたいな。

やっぱり見くびられているんじゃないですか。未来っていつも。

ーー糸井重里さん

 つまり、世界を自分でどうにかしようっていうのはおこがましい。大事なのは、受容の精神ですよ。世界を受け入れよう、受け入れれば何とかなるじゃんって。そこは大きかったね。

ーー篠山紀信さん

詩を書き始めたら、どうしても読者が必要じゃないですか。だから、他者が必要だってことを僕は詩を書くことを通して知ったところもあって、お金が入ることで他者に受け入れられているという感覚がずっとありました。

ーー谷川俊太郎さん

ただ、ちょっと偉そうに言うと、西洋の作家はみんな最初にラストから考えると思うんです。でも、日本は『徒然草』がいい例で、つれづれなるままにお話を進めていく。これ、日本の伝統なんです。日本の漫画連載だって、ラストがわかって描いてるものなんてないですよ。完結しないものも多いでしょ。

ーー鈴木敏夫さん

人間っていうのはどこかで物心がついて、社会性がでてくると、やっていいことといけないことを選択できるようになって、そこから保守的になっていく。でも、例えば僕は70歳になったことにまだ40歳くらいだと感じていましたが、それは極端な話だとしても、他人から見たときに幼稚に思われたくないという気持ちがあると、ものをつくる人間には邪魔になる。

ーー横尾忠則さん

勉強するってことは過去を知ることで、過去の真似をしないため、自分の独自なものをつくりたいから勉強するんですよ。本当に誰もやっていないことをやれるかどうかという保証なんかなくても、少なくともそこを目指さないと。

 

音楽も映画も、ほとんどは亡くなられた偉人たちとの対話でしょう。到達できないような人がたくさんいるので、「下をみちゃいかん」というのが僕の戒めなんです。日本では昔から「上ばっかり見ちゃいけません」と言いますけど、ものづくりに関していうと、下を見て満足していたら、そいつは終わりですよ。

ーー坂本龍一さん

(お名前を入れる時に、迷った結果「さん」に統一しました。)

 

「仕事。」してますか?

仕事、好きですか?

 

「仕事」というと、

以前、植田志保さんに絵を描いて頂いたときに、

「わたしは、色をつかまえる係なんです。」

って話して下さったのがすごく印象的で、今でもふと思い出します。

shiho-ueda.com

仕事を「係」って思うんだなあって。

みんな、きっと世界のなにかしらの「係」なんだなあって。

 

「わくわくは、螺旋状で、増えるばかりで減ることがないらしいですよ」

 

これも彼女が言っていたことなんですが、たぶん一生忘れないし、他のひとにもどんどん伝えていきたい一言。

 

「仕事。」に対する向き合い方は、人それぞれ。

ただ、この本に出てくる方には、みなさんそれぞれの「信念」があった。

 

わたしも、「仕事。」がしたいです。