『風の声を聴け』村上春樹(講談社)
群像新人賞を受賞したデビュー作。
29歳の「僕」が、1970年8月、20歳の「僕」のひと夏を回想するものがたり。
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
あまのじゃく代表なので、読んだことがなかったんです。村上春樹さんの本。
きっと日本で一番有名な作家先生。
他のひとが絶賛しているのなら、わたしは知らなくてもいいかなって。
いっぱいパトロンがいるなら、わたしは別のひとを応援したいなって。
でも、今年はそういう意味わかんない「自分ルール」と違うことをしてみてこそだから!と、「19歳の本棚」にのっていたこちらを手にとりました。
文明とは伝達である、と彼は言った。もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ。
引き算の文章。引き算のものがたり。とでも言えばいいのでしょうか。
「わかりやすい」話ばかり手に取っているんだなあ。
そして、世界にはそういうものが溢れているんだなあ。
「思考停止」だなんて、聞くとちょっぴり悲しくなる言葉がたまに目に飛び込んで来ますが、確かに、どこを見ても何もしても考えなくていいようなものが多いんですね。
ジャンルは違うんだけど、「考える余地がある」点では、最近読んでいる カント も、そうだ。
「良い小説さ。自分にとってはね。俺はね、自分に才能があるなんて思っちゃいないよ。しかし少なくとも、書くたびに自分自身が啓発されていくようなものじゃなくちゃ意味がないと思うんだ。そうだろ?」
にじみでる「教養の高さ」かつ「そのセンスの良さ」も、多くのひとを惹きつける理由なのでしょうか。
わたしの率直な感想は「鼻につくなあ!くっそう、もっと勉強しよう・・・」でした。
(よっ、さすが、あまのじゃく代表!泣)
「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」
『仕事。』川村元気(集英社)
仕事は、金のためだけにあるのではない。
だからこそ、どんなに金持ちになってもスティーブ・ジョブズは働き続けた。
それはきっと彼にとっての仕事が、人生を楽しくする手段だったからだ。
「仕事。」で世界を面白くしてきた日本の巨匠の方々は、30代のころ何を考えていたのか?そんなテーマで行われた対談をまとめたもの。
君らの世代に共通した何かっていうのは僕は見当もつかないけど、僕らの世代は他人の映画の悪口ばかり言っていた。でも、後になって批判する頭のよさより、いいなぁと惚れ込む感性のほうが大事だと思うようになったね。アイツはばかだとか、あの作品はだめだとか、決めつけるのはかっこよかったり気持ちがよかったりするけど、そういう人間はえてして才能がない場合が多いな。
ーー山田洋次さん
でもね、例えば今の若いフリーランスのライターがある時期ぐっと我慢して、大きな仕事を一つするってことをどうしてできないんだろうって思ったりもするんですよ。3年歯を食いしばって名刺代わりになるような仕事を完成させれば、そこから自由が拓けるのに、それを耐える忍耐力が若い書き手には少ないんだろうかって。
ーー沢木耕太郎さん
20代後半で人生を通して表現するコンセプトを発想して、そのことを今でもずっとやり続けている感じがする。だいたい、30代前半までにやることが見つからなかったら、人生やることないよ。自分の原体験みたいなものは、そこまでに出尽くしちゃってるもの。
ーー杉本博司さん
20代や30代なんて言ってみれば青春時代なわけで、僕だって自分なりの表現やオリジナリティにたどり着けていないにもかかわらず、破天荒に無鉄砲にやってました。ただ、本当に作品と言えるものはもっと先になるんじゃないかなとは常に思ってましたけどね。
ーー倉本聰さん
よく若者たちに言うのは「受け仕事だけになるな」ということ。過去の遺産で、目をつむっててもできるようになると、仕事なんて面白くないんだよ。連鎖を断たないと。僕にしてもAKBが当たればアイドルの話、『川の流れのように』が当たれば演歌の話ばかりがくる。つまり、秋元康にこんなことをやらせたら面白い、なんてことを考えてくれる人は誰もいない。
ーー秋元康さん
追い込まれますね。でも、堀越二郎や堀辰雄は、もっと追い込んでいたでしょう。『風立ちぬ』の中でも出てくる台詞ですが、「力を尽くしてこれをなせ」というのは、どんなジャンルの仕事でも当てはまると思います。
ーー宮崎駿さん
だから、高いところとか低いところではなく、混ざったものの中で面白いことを探すっていうのが始まっていると思うんですよ。"anyone"、つまり隣人を尊敬できないと、やっぱり本当は思想として弱い。いや、自分だってなかなかできないし、今だって「あの野郎・・・」とか毎日思っているけど、僕は未来の側にちょっと贔屓したいんで、そっちにアクセルを踏みたいな。
やっぱり見くびられているんじゃないですか。未来っていつも。
ーー糸井重里さん
つまり、世界を自分でどうにかしようっていうのはおこがましい。大事なのは、受容の精神ですよ。世界を受け入れよう、受け入れれば何とかなるじゃんって。そこは大きかったね。
ーー篠山紀信さん
詩を書き始めたら、どうしても読者が必要じゃないですか。だから、他者が必要だってことを僕は詩を書くことを通して知ったところもあって、お金が入ることで他者に受け入れられているという感覚がずっとありました。
ーー谷川俊太郎さん
ただ、ちょっと偉そうに言うと、西洋の作家はみんな最初にラストから考えると思うんです。でも、日本は『徒然草』がいい例で、つれづれなるままにお話を進めていく。これ、日本の伝統なんです。日本の漫画連載だって、ラストがわかって描いてるものなんてないですよ。完結しないものも多いでしょ。
ーー鈴木敏夫さん
人間っていうのはどこかで物心がついて、社会性がでてくると、やっていいことといけないことを選択できるようになって、そこから保守的になっていく。でも、例えば僕は70歳になったことにまだ40歳くらいだと感じていましたが、それは極端な話だとしても、他人から見たときに幼稚に思われたくないという気持ちがあると、ものをつくる人間には邪魔になる。
ーー横尾忠則さん
勉強するってことは過去を知ることで、過去の真似をしないため、自分の独自なものをつくりたいから勉強するんですよ。本当に誰もやっていないことをやれるかどうかという保証なんかなくても、少なくともそこを目指さないと。
音楽も映画も、ほとんどは亡くなられた偉人たちとの対話でしょう。到達できないような人がたくさんいるので、「下をみちゃいかん」というのが僕の戒めなんです。日本では昔から「上ばっかり見ちゃいけません」と言いますけど、ものづくりに関していうと、下を見て満足していたら、そいつは終わりですよ。
ーー坂本龍一さん
(お名前を入れる時に、迷った結果「さん」に統一しました。)
「仕事。」してますか?
仕事、好きですか?
「仕事」というと、
以前、植田志保さんに絵を描いて頂いたときに、
「わたしは、色をつかまえる係なんです。」
って話して下さったのがすごく印象的で、今でもふと思い出します。
仕事を「係」って思うんだなあって。
みんな、きっと世界のなにかしらの「係」なんだなあって。
「わくわくは、螺旋状で、増えるばかりで減ることがないらしいですよ」
これも彼女が言っていたことなんですが、たぶん一生忘れないし、他のひとにもどんどん伝えていきたい一言。
「仕事。」に対する向き合い方は、人それぞれ。
ただ、この本に出てくる方には、みなさんそれぞれの「信念」があった。
わたしも、「仕事。」がしたいです。
『伝え方が9割』佐々木圭一(ダイヤモンド社)
この本は最短距離で、あなたのコトバ / 伝え方を磨くためのガイドだと思って下さい。
言わずもがな、とても有名なコトバの教科書。
「強いコトバ」をつくる5つの技術を筆頭に「伝え方の技術」を学ぶことができます。
①サプライズ法
1.伝えたいコトバを決める。
2.適したサプライズワードを入れる。
例「(語尾に)!」「びっくり、〜」「そうだ、〜」「実は、〜」
②ギャップ法
1.最も伝えたいコトバを決める。
2.伝えたいコトバの正反対のワードを考え、前半に入れる。
3.前半と後半がつながるよう、自由にコトバを埋める。
例「誰もが 敵 になっても わたしは味方です」「他の店が まずく感じるほど ここのラーメンは旨い」
③赤裸々法
1.最も使いたいコトバを決める。
2.自分のカラダの反応を赤裸々にコトバにする。
3.赤裸々ワードを、伝えたいコトバの前に入れる。
例「何も考えられない。お腹がすいた。」「お腹がぐっと締め付けられる。お腹がすいた。」「くちびるがヒリヒリ。お腹がすいた。」
④リピート法
1.伝えたいコトバを決める。
2.繰り返す。
例「うまい うまい」「人民の、人民による、人民のための政治」
⑤クライマックス法
1.いきなり「伝えたい話」をしない。
2.クライマックスワードから始める。
例「ここだけの話ですが、〜」「他では話さないのですが、〜」「誰にも言わないでくださいね、〜」「一言だけつけくわえますと、〜」
コトバって、ことばって(わたしはこの字を使いがち)、言葉って。
読み書き教育がなければ、こんなおかしな世界になることもなかった、というゴダールの発言は今、ちゃんと読み返したほうがいいと思う。観光旅行こそ国を潰すいい道具だよともいう。自国に違う言語を。日本語の中に異国語をつくれとプルーストも言っている。いま意味が通じる会話とか一番害悪だと思うよ
— 坂口恭平 (@zhtsss) 2017年6月17日
このツイート、最近一番面白いなって思ったんです。
まず、世界に色々な言語がある。各島の、誰がいちばん初めに共通言語を作ろうと思ったんだろう!
色んな人の、色んな考えの ことば が世界には溢れすぎていて、そのひと達のことばをインプットしちゃえば、自分だけの ことば なんてなくても過ごせるようになった世界。
意思疎通するためにできたコトバが、どんどん少数のひとの思考を・技術を発達させ、そして一方で、どんどん多数のひとの思考を奪っているってことかなって。
もちろんわたしもその渦の中にいる。面白いですよね。
ああ、この本のプロモーションにはなっていないかな。
でもね、わたしはこのツイートをみて、もっと「伝え方」を知りたいと思ったの。
奪われる側ではなく、奪いたいわけでもなく、思考する側になりたいなって。
最短距離で いまのコトバのルールを知って、そこから考えていきたいなって。
害悪でもなんでも、わたしは ことば がすき。
コトバをひとに届けて、自分が思うように受け止めてもらうための技術がぎゅぎゅっとまとめられている本 それが「伝え方が9割」です。
言語が違っても、「サプライズ」があると人はドキドキします。
人種が違っても、「ギャップ」があると人は感動します。
地域が違っても、「赤裸々」なものに人はひきこまれます。
国が違っても、「リピート」があれば記憶に残ります。
文化が違っても、「クライマックス」に注目します。
原田マハさんの本を読んで気になっていたスピーチライターの方。
やっとお名前を知れた。調べる限り、まだ、世間にはでてきていないのかな。
胸がアツくなるほど、コトバのチカラの強さを感じる。
【TOEICリスニング対策】オバマ~大統領としての最後のスピーチ(英語字幕)