『ハヅキさんのこと』川上弘美(講談社)
新しい環境でまだ自分のペースを掴みきれておらず、疎かになっている感想文。
なんだか1年前と自分の気持ちも変わっていて、ついつい会った人と話し込んでしまうんだよね。たった1年だし、その期間も仲のいいひととは会っていたのにな。
「あなたのことをもっと知りたいんです」
まさに そんな気持ち。
それは、本を読んできたからも関係がある気がする。
本で、色々な考えに触れて自分に潜っていたら、前より許せることも多くなったし、むしろ生身のひとの自分と違う考えがもっと知りたくって、うずうずしている。
そんな 現状。
さて、気持ちを切り替えて。
数ページの短編集。
エッセイを書こうとしたら掌編小説になったもの、なんですね。
「虚と実のあわい」というのも納得。
見当はずれかもしれないけれど、「だめなものはだめ」だったり「体がね、しっとりしますよ」だったり、誰かのくちからぽろりとでたセリフから広がったのかしら。
一遍にひとつは必ず、手が止まるセリフがあったんですよね。
とても生き生きとしていて、耳に残る。
いつか町子が部屋を突然出ていってしまうことが、私は恐かったのだ。私は町子に執着しはじめていた。好き、というのとは違う。癖になる、という言葉がいちばん近いだろうか。町子は癖になる。町子のいない毎日を、もう私は想像できなくなっていた。
「だめなものはだめなんですね」しまいに、わたしもヤマシタさんと口をそろえて言っていた。ずいぶんと好きな詩人だったはずなのに、好きでもだめなものはだめなのかもしれないという気分に、支配されていた。
時間がたった、と唐突に思った。そう思ったとたん、またぶるっと震えがきて、今度こそ鼻の奥がつんとしかけたが、我慢した。駅に着いて電車から降り、周囲をみまわすと見慣れた景色があった。何でもなく生きて死んでゆく。確かめるようにつぶやいてから、改札への階段をのぼりはじめた。
『希望の国のエクソダス』村上龍(文春文庫)
エクソダスとは、旧約聖書にある出エジプト記(モーゼのエジプト脱出の物語)。 そこから大量の国外脱出の事を言う。 その他以下のような事柄にも用いられる。2017/06/18
18年前に近未来小説として書かれた本。
「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない。」
80万人もの中学生が、一斉に学校を捨てた。
意思を持った中学生達が、自分たちの能力で大金を稼ぎ、ユートピアを作り上げていく物語。
この本を自分が中学生の時に読んでいたら、どう変わっていただろう。
ゆっくりと死んでいる、幼なじみはそう言ったが、それは多くの日本人に共通の気分だったかも知れない。日本人にとって重要な何かが音を立てて崩れていくような不安感が1990年代からずっと続いていたのだ。結局のところ、それは閉塞感だったと俺は思う。
「円」がなくなる未来なんて考えたこともなくて、平和ボケしている純日本人な自分に驚いた。本の中でも「危機」で終わっているけれど。
仮想通貨もどんどん日常に溶け込んで来ていて、日本人の人口が急激に減少する近未来。アジア共通通貨ができる可能性だってありえなくはない。
関口さんは反乱を起こしている中学生のことがわからないとおっしゃいました。わかるわけがないんです。中学生だけではなく、他人のことはわからない。もちろん自分のことさえわからないし、未来のこともわからない。わたしたちは、終戦直後と違って、そういったことがわからないということにやっと気づいたわけです。だからこそ知識や仮設や検証といったことが必要になってくるわけで、これは進歩だとわたしは思います。
わからないことから。わかりあえないことから。
中学生達が、北海道に作り上げたユートピア「野幌」。ノホロ。
ノッポロという読み方で実在する地域なんですよね。
野幌が地元に近いからイメージがつきやすかったこともあり、感想を話し会いたくて、帰省時に同じく本好きの母に「希望の国のエクソダス、読んだことある?」と聞いたら、「あんたそんな本読んでるの。恋愛小説でも読みなさい。」と言われた「婚期?なに?それっておいしいもの?」と思い続けているアラサーは、わたし。南無三!
おれは関谷さんに自分の編集部にいる同年配の女と全然違うものを感じていた。うまく言えないが、彼女は普通な感じがした。こうやっておれたちと一緒にいても、さっき中村君と一緒のときも、彼女には無理をしている感じがまったくなかった。
常に人の目を・評価を気にしたり、競争があったり、常日頃ストレスに晒されている私たちの「普通」ってなんなのだろう。
自分が好きなものを好きだといえず、嫌いなものにも蓋をして、「社会」というよくわからないルールのもとで生活することが「普通」で「自然」なのだろうか。
わからないことから、わたしは語彙を獲得していきたいし、
わかりあえないことから、個々人との距離を縮めていきたい。
最近読んだ本の中で一番、自分の生きる「希望の国」と、その国で生活していく自分の未来を考えた本だった。
なんだかまた転換期に入って来たのかな。
『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵(幻冬舎)
ハーバードじゃないんかい✋というツッコミは受けます。
目次を読んで惹かれた本。
大学もう1度行きたいなあ なんてたまに思うのですが、そんなぼんやりした目標じゃだめだよね。
大学時代を思い出してみても、バイトに励んでばかりいたし。
じゃあ、あの頃なんでちゃんとやらなかったんだろう。それに尽きる。
ただ、35〜40代のどこかで、行こうと思っています。大学!
ビジネススクールなら、もっと早く行った方がいいだろうな。
ストーリー、イノベーション、交渉術からマインドフルネスまで、9つの異なる授業から「人間はいくつになっても自分を変えられる」方法を知ることができる本。
(こういうことですかね。ジャンプっこの心に生きる名言!)
コンピューターが人間の知能を超えてしまう「シンギュラリティー」(技術的特異点)は、2045年ぐらいに訪れる、と人工知能研究の世界的権威、レイ・カーツワイル氏は予測している。
プレゼン内容が記憶に残るか残らないかは、話術とは関係ないそうだ。多くの人の記憶に残った発表者の特徴は、①ストーリーを使った、②感情に訴えた、③10のことをいわずに1点に絞ってプレゼンした、のいずれかだったという。
「人間は選択肢が多すぎると、選択そのものを放棄してしまう」ということだ。
人間が最も幸せだと感じるのは何をしているときだろうか。普通に考えれば「休息している時間」が最も高そうだが、結果はその逆。幸福度が高かったのは、性行為、運動、会話など、何か1つのことに集中していた時間帯で、幸福度が低かったのは、マインドワンダリング状態だったとき、つまり、休憩していた、何か単純作業をしていた、自宅でパソコンを使っていた時間帯だった。
瞑想のプロの脳は一般人の脳よりも、島皮質、前頭前野、体性感覚野、聴覚野の皮質の容積が大きいことがわかった。つまり長期間の瞑想週間は、人間の脳を変化させ、感覚を研ぎすまし、五感、記憶力、決断力を高める可能性が高いのだ。
本の中でインタビューが載っていた人気講師のTED。
本当に、鬱って誰でもなる可能性がある病気なんですね。
ただ、治せる可能性もある病気。偏見を持たずに(自分がなっても、知り合いがなっても)付き合っていかなければ。