『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン(早川書房)
英題は「Thinking, Fast and Slow』
日本語訳の副題は「あなたの意思はどのように決まるか?」
- 作者: ダニエルカーネマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/12/28
- メディア: Kindle版
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ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダニエル・カーネマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 文庫
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ああ、読むのにめちゃくちゃ時間がかかった。
この本でいうところの「スロー」なシステム2(遅い思考)をたくさん使わないと、わたしは読み進められなかったのです。下巻に入るのがつらくてつらくて、上巻読み終わってから2ヶ月くらい間を空けてしまいました。
帯に「東大でいちばん読まれた本!」と書いてあって、さすがすぎるぜ、東大生!と、職場の最寄駅で東大生らしき学生を見るたびに、ははあ、と尊敬の眼差しを向けていた(そして、東大生とじゃあ、そもそも頭のつくりがだな、、とか言い訳して読むのやめようかと思っていた)くらいには、読みづらかったのです。
ただですね、つらいもの=今まであまり触れたことがないもの なだけなわけで、これを克服したら、論文的なものも読むのが楽しくなるかもしれないぞーー!というドM根性で読み進めたら、下巻は全然つらくなくて、アレレ?と肩透かし。
(いや、最後のほうは3ページ読んだら眠くなる催眠にかかっていたので、べッドタイムストーリーにぴったりでした!泣 おばかってつらい!)
とにかくつらかったアピールが長くなってしまいましたが、
「認知的錯覚」という大きなテーマのもと、
上巻では、「速い思考(直感的で感情的)」と「遅い思考(努力を要する)」の「二つの思考」を、
下巻では、「経験する自己」と「記憶する自己」を主軸に、
意思決定に関して陥りやすい罠について述べられた本でした。
ヘスの発見のうち、とくに私の興味を引いたものが一つあった。それは、瞳孔が知的努力を敏感に示すバロメーターになる、という指摘である。二桁のかけ算をやっているとき、瞳孔はかなり拡がる。もっと難しい問題になると、さらに拡がるという。この観察は、知的努力に対する身体的な反応が感情的覚醒とは異なることを示唆した。
ごくありきたりの単純な動作が、私たちの考えや感じ方に無意識のうちに影響をおよぼすこともある。ある実験では、オーディオ装置の音質チェックのためと称して、被験者にヘッドフォンでメッセージを聞くように指示した。ただ聞くのではなく、音のゆがみを調べるために、聞きながら頭を何度も動かす。被験者の半数は頭を上下に、残りの半数は左右に振る。この条件でラジオの論説番組を聞いてもらったところ、上下すなわち頷く動作をしたグループは論説に賛成し、左右すなわち否定の動作をしたグループは反対した。この場合も意識とは無関係に、ありふれた身体的な動作が肯定あるいは否定に結びつけられたのである。
縦ノリの音楽が人気があるのにも関係あるのかなー。
「CEOが賞をもらうと、その後その会社は、株価の面でも業績の面でも振るわなくなることがわかった。その一方でCEO本人の報酬はあがるため、CEOは会社以外のことに以前より多くの時間を費やすようになる。たとえば本を書く、他社の社外取締役になる、などだ。また自分の資産運用や資産管理に注ぎ込む時間も増える」
友人とこの話をしてて知ったのですが、これ、株をやる人の定石なんですってね。知らなかった。面白いなあ。「褒められて伸びるタイプだから」ってひとは経営者には向いていないということですかね。
おそらく組織のほうが、個人よりも楽観主義をうまく抑えられるだろう。そのために一番よいと考えられるのは、ゲーリー・クラインが考え出した方法である。やり方は簡単で、何か重要な決定に立ち至ったとき、まだそれを正式に発表していないうちに、その決定をよく知っている人たちに集まってもらう。そして、「いまが一年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、5〜10分でその経過を簡単にまとめてください」と頼む。クラインはこの方法を「死亡前死因分析(premortem)」と名付けている。
人間関係を長期的にうまくやっていくためには、よいことを追い求めるよりも悪いことを避けるほうがはるかに大切だという。ゴットマンは、安定した関係を維持するためには、楽しい会話と楽しくない会話の比率を少なくとも5対1にしなければならないと主張する。
起こりうる後悔に対して先手を打っておく方法もある。おそらくいちばん効果的なのは、予想される後悔をあらかじめ書き出しておくことだ。
昔、上司によくいわれたなあ。最悪の状況をいつも考えておけって。なつかしい。
まちがった直感の声は大きくてよく通り、理性の声は小さくて聞き取りにくい。
楽観的なひとのほうが、行動にすぐ移せるぶん「幸せ」を多く感じやすいし成功を収めているひとが多い。だが、人間の意思決定なんてその時の状況によって一貫性がなく変わるものだから、「直感」なんていちばん信じられないものに従うよりも、この本の例を教訓に「考えて行動しろ」!ってことでしょうか。
この本は「LIFE SHIFT」や「あなたの体は9割が細菌」を教えてくれたひとに勧められて手に取ったのでした。
すごく面白いひとで、ある界隈では有名なひとらしい(わたしはその業界にはまったく興味がなく、知り合いに聞いたら「それは神のような存在だよ…!」と言っていたからすごいひとなんでしょう。それは、それ。わたしの知り合いの彼は、わたしの知っている彼。と思うようにしている。その面を知らなくても十二分に尊敬できる素敵なひとです。)のですが、
教えてくれたときに一緒に
を教えてくれたり、そうそう、これも教えてくれたの!
(このTEDを見たことがなかったら、ぜひ見てみてください◎)
他にも、時間の使い方をすごく大切にしているひとなので(ビジネスで、いかに自分を介さないシステムをつくるか ずーーっと考えてるらしい。)、それで実際に試していることとかも教えてくれたり。
自分の手を動かして色々と掴み取っているひとって、当たり前のように「他人のために」知恵を貸してくれるんだなあって。会うたびに感心します。
本当に、尊敬できる素敵なひと。ありがたや。
そう考えてみると、社会的地位が高いひとで「独り占めしてやる!」みたいなひとにわたしはあったことがないな。みなさん とてもフレンドリーで、いやいやではなく、喜んで情報をプレゼントしてくれる気がします。
いつかなにかでお返しできたらいいのですけど。いつも、ありがとうございます。
って、わたしの3ヶ月にもおよんだ一進一退の攻防の終わりはこんな締めでいいのかしら。