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=== memo ===

こつこつ読書感想文📝

『ふたつのしるし』宮下奈都(幻冬社)

ふたりの「ハル」。温之と遥名。

自分に正直だが、世間から落ちこぼれだと言われる「ハル」と

自分に蓋をしているが、優等生の「ハル」

ふたりの「ハル」のものがたりが、みつけた「しるし」によってやがて混じり合う。

 

ふたつのしるし (幻冬舎文庫)

ふたつのしるし (幻冬舎文庫)

 

 

名前と自分が一致したのはいつだったっけ。

ハルのように、わたしはずっと「なっこ」だったんだよなあ。今は、そう呼ぶのは地元の友人くらいになっちゃった。

 

いちばんいいときに浮かんでくるしるし。しるしというのは、希望と似ている。今じゃなかったら気づかなかった。一年前でも、五年前でも、わからなかった。すれ違ってもお互いに気づかなかっただろう。

 

一瞬出会って、それきり交わらなかったふたりの物語がまた交わるのは あの震災のとき。

自分に正直でまっすぐにしか生きられない温之だから、すぐにしるしに気づけたのだろうし、遥名の場合は、震災というイレギュラーなことがあったから、しるしを信じられたんじゃないかな。

あの時、日本にいた人なら、きっと忘れられない 長い長い長い1日。

 

ぜんぜんちがう。思っていた中学生活とぜんぜんちがう。もっとほんとうのことに近づいてもいいんだと思っていた。うれしいことにも、悲しいことにも、いっぱい揺さぶられながら生きていくんだと思っていた。できるだけ揺さぶられないように、揺さぶられてもそれを気取られないように、縮こまって縮こまって息をしている。

「みんなでドッジボールやらなきゃいけないなんて、そんなの休み時間じゃない」

花井さんはそういった。

なるほどなあ、とハルは思った。たしかに、そんなのはぜんぜん休みにならない。学級会で決まったことが正しいわけでなないのだ。ハルにとっては発見だった。それまでのハルは、正しいか、間違っているか、考えることもなかった。正しいか。間違っているか。そこにハルの興味はなかったのだ。まして、学級会での議題に自分の考えが関与することなどないと知っていた。

そうではなかったのかもしれない。関与するかどうか、できるかどうか、そういうこととは別に、自分の考えがあってもいいのかもしれない。

「東京に来て、よかった」

遥名の胸にはまだ熱が残っていて、じんじんと放射している。

 

宮下さんの表現が大好き。じんじんします。キュンキュンします。

 


スピッツ / 愛のしるし

 

震災で思い出す、ちょっと不思議でこわい わたしの話。

あの日の夜から、知らない人からSMSが2〜3日に1回届くようになりました。

いちばんはじめは「こわい。不安だ。」というもの。

被災した方のSOSかと思って返信しようとしたり電話しようとするのですができませんでした。(今思えば、着信拒否されていたのでしょう)

それから、「これから不安だ」だの「彼女がほしい」だの「親を安心させたい」だの、そのひとが不安に思っているんだろうことが、1ヶ月くらいの間送られてきて。(わたしも拒否すればいいのに、なぜか、被災した方だったら!とか思っちゃってたんですよね。んなわけないわー!どう考えてもそれどころじゃないだろうよ!!!)

最後に、

「今もまだ〇〇(わたしが当時住んでいた駅名)に住んでいるのですか。〇〇(わたしのフルネーム)さん」

とだけ来て、それきり送られてこなくなりました。(キャー!)

そもそも知らない番号だったし、その時引っ越して2年目くらいで住所知っている人でそんなことしそうな人も思いつかなかったし、もー、なんなの!という思い出。

不安なのは、おまえだけじゃないぞ!全国民そうだったぞ!

まあ、でも、そんなことしちゃうひとの方が、そんなことしたことも忘れて今は幸せに暮らしてるんだろうね。そうであってほしい。

 

人生はクローズアップで観れば悲劇だが、ロングショットで観れば喜劇だ、といったのは誰だったか。