『窓の魚』西加奈子(新潮文庫)
女の人の死体が浮かんでいたという、あの池の上を、歩いたのだという事実、宿の浴衣が、鯉と一緒に、ゆらゆらと揺れていたのだと思うと、それはひどく、美しい景色のような気がしました。
そして、その女の人が、出来るなら、私が露天で会った、あの女の子であればいいと、思いました。(P50)
死体として発見されたのは、誰なのか。
犯人は、誰なのか。
ナツとアキオ、ハルナとトウヤマの2組の恋人たちの温泉旅行。
それぞれの視点で、同じ一晩が描かれる。
お知り合いにおすすめされて手に取った本。 西加奈子さんの本は何冊か読んだのですが、今までのものと全然違う雰囲気で驚きました。
いい小説を読むと、余韻に浸りたくなる。
巻末の解説でこうあるのですが、確かに色々と考えさせられる不思議な読後感。
これを余韻と呼ぶのか。後味は、悪い!ぞ!
この本の底にあるものは「恋愛」だと思うのですが、 各々の視点で語られる恋人や友人の印象が、本人の考えや真意と違うことばかりなのが面白かった。
わたしたちが普段わかったつもりでいる会話や理解もこんな風に信用ならない頼りないものなのかもしれない。
むかしのクリープハイプのうたのようだった。
って、言ったら、わかってくれるかな。